2021年3月の新型インフルエンザ等対策~特措法の改正

こんにちは。弁護士の田代です。
今回の動画では、2021年3月に特措法(新型インフルエンザ等対策特別措置法)の改正がなされましたので、その内容について簡単にご説明したいと思います。

https://www.cas.go.jp/jp/houan/210122/siryou6.pdf

まず改正の内容をまとめて画面に表示しております。このまとめた内容については、右下にURLを載せておりますが、第204回通常国会の中で用いられた資料に記載の改正の趣旨・概要を反映させて作成したものです。特に、同資料で改正の趣旨を見ると、改正の要点(特に力を置いてる点)がどこかが分かると思います。

読み上げますと、現下の新型コロナウイルス感染症に係る対策の推進を図るため、(1)「まん延防止等重点措置」を創設し、営業時間の変更の要請、要請に応じない場合の命令等を規定し、(2) 併せて事業者及び地方公共団体等に対する支援を規定するとともに、(3)新型コロナウイルス感染症を感染症法において新型インフルエンザ等感染症と位置付け、所要の措置を講ずることができることとし、(4)併せて宿泊療養及び自宅療養の要請について法律上の根拠を設ける等の措置を講ずる。
以上、一文が長くて分かりにくい面がありますが、内容を分解しますと、上の画像に表示されている(1)から(4)、そしてそれ以外の改正点が(5)その他、とこういう形で分けて整理できると思います。そこで順番に見ていきましょう。

⑴ まん延防止等重点措置を創設

(1)のまん延防止等重点措置を創設。これが今回の改正点の一つの目玉ではないかと思います。聞きなれない言葉ですが、まん延防止等重点措置、これまでなかった制度が作られたということで、どういう制度かと言いますと、緊急事態宣言ですね。出すか出さないか、解除するか解除しないのかと毎回議論が盛んに行われますが、その前段階あるいは緊急事態宣言の解除後であっても、まだ感染症のまん延の恐れが継続している段階で、行政が措置を実施できるようにしようと、つまり緊急事態宣言を解除する・解除しないと、それと通常の状態との間にワンクッションですね。その前段階、その後の段階でできることを規定しようという制度になります。この感染症のまん延の恐れ、これがいわゆる要件ですね。こういう時にできるということですけれども、これは都道府県ごとの感染の拡大のおそれ、それと医療提供への支障のおそれ、よく医療崩壊だなんだと言われていますけれども、その医療提供の支障のおそれという、この二つの観点から判断されます。

特にもう一つ重要なのが、最後の実施できる措置とは何なのか。 これ法的には効果といいますが、これは施設管理者等に関して、いわゆる事業者ですね、次のような要請ができます。
例えば、①営業時間を変更してくれ。あるいは、②従業員に対する検査を勧奨してくれ、あるいは、③入場者の感染防止のための整理・誘導。特に人の出入りが激しいところですよね。④事業所の消毒あるいは消毒設備を設置してくれ。アルコールなどです。⑤入場者に対してマスクを着用など感染拡大防止を要請してくれ。⑥あるいはそういう要請に従わない入場者とか、あるいは症状がある入場者、例えば体温装置で熱が出た者とか、そういう者に対しては入場させないと、そういうことを行政が事業者に対して要請できると。

ここから大事なのが、これに従わないとき、要請に従わないときには、さらに強く命令ができる。命令とは何かというと、それに違反した場合には、ペナルティーが出てくる。これは具体的には過料というお金を取られるというペナルティが事業者に課されます。こういった強い制限というものが課されるということが重要な点です。

ちなみに公表というのもこの制度にありまして、こういった要請をこの事業者に出しました。さらに命令を出しました。そういったものを行政は公表することができる。ただ、これは公表しなければいけないわけではないというのと、公表をすることで反ってその事業者の名前が知れ渡り、人がそこに殺到することになるとか、例えば営業時間深夜までやってますといったことになることもありますし、なのでそこを公表する・しないは行政の方で自由に決めれると。あと、公表はあくまでも情報提供の意味ですので、制裁ではないとそういった扱いになってますので、カッコ書きで記載しております。これが今回の改正点の目玉だと思います。

⑵ 事業者及び地方公共団体に対する支援を規定

事業者及び地方公共団体に対する支援を規定、という風に書かれています。具体的にはまず事業者に対する支援。これは国や地方公共団体が事業者に対してする支援なんですが、特にまん延防止等の重点措置上の要請を受けた者、それに対しての支援というものはしっかりしなさいと、それ以外の事業者に対しても支援していきましょうと、そういう規定がされています。

さらに医療機関・医療関係者に対しての支援も定められておりますし、あるいは国が地方公共団体に対して支援しなさいと、地方公共団体が感染の拡大を防止するための何か施策をすると、これに対しては国も支援しなさいよと、具体的には情報の提供であったり、あるいは経済的支援もございます。 そういったものが国に求められると、そういった点も改正点の一つでございます。

⑶ 新型コロナウイルス感染症を感染症法上に位置付け

新型コロナウイルス感染症を感染症法上に位置づけられたというものなんですが、これはこれで直ちに大きく今までの運用・制度がなにか皆様の生活が変更するものではございませんので割愛させて頂きます。

⑷ 宿泊療養及び自宅療養の要請について法律上の根拠を設ける

宿泊療養・自宅療養の要請について法律上の根拠を設ける。これも重要な点になるのかなと思いますので少し見ていきます。
この法律上の根拠と宿泊療養・自宅療養の要請ですね。今までなかったものができましたと、これは実は感染症法なんですよね。特措法そのものではないんですが、感染症法の改正によって法律上の根拠が出てきました。具体的には、例えば宿泊療養・自宅療養の要請、要するに症状がある者に対しては宿泊施設にいてください。あるいは自宅にいてください。 あるいはその入院勧告・入院措置、そういったものも定められております。

さらにもう一つが、そういう要請結果が出た者に対して、積極的疫学調査、つまりこれまでどういう行動をこの2週間してきたのかとか、そういうことに対して、調査に対して回答する義務が定められておりまして、これらについては、違反者に対しては過料による制裁が定められております。ここもこれまでになかったものが新たに設けられたもので、制裁があるものについては、特に重要なものになるかなと思います。
制裁のない要請については、別に法律になくてもできるはできると定められておりましたのでこの点はご注意ください。

⑸ その他

最後にその他の改正点についてざっと見ますと、例えば施設の利用制限の強化がされました。これに対しても施設の利用制限に関して行政から要請がされたり、あるいは命令がされたり、最後の刑罰というのは少し語弊があります。行政罰ですね。命令に従わない者に対しては過料の制裁がなされたり、あるいは公表については先ほどと同じようにペナルティーという意味ではないけれども、要請や命令がされた時には公表がされるという制度。

他には新型インフルエンザ等対策推進会という組織があって、これまでは単純に専門家の意見を聞いて~とか云々といって規定されていた所の一部が、そういう政府が設置する対策推進会の意見というものが重要になってくるようになりました。

さらに他には差別の防止策、例えばですけれども感染者に対して、あるいは感染者が出た団体に対しての差別的な取扱い、残念ながらそういったものは未だにございます。そういったものに対しての防止策を国・行政に対して求めると、そういう規定などそういった点が改正点としてはございます。

以上、今回特措法を中心とした改正内容についてざっと見てみました。特にニュースなどでは一部一部に焦点を当てて報道はされますが、その全体像については元の国会ですね、立法機関に関しての資料をご覧になられてみると、一つ勉強になるんじゃないかなと思いますので、右下にアドレスを書いておりますのでよかったらそちらの方をご覧下さい。
その他何かご不明な点、あるいは今回のコロナの関係で現に実害を受けてる方や、不安にさらされている方、ぜひ弁護士にご相談ください。

著者プロフィール


田代隼一郎 弁護士

おくだ総合法律事務所
平成24年弁護士登録
福岡県弁護士会所属
熊本県熊本市出身
真和高校卒
九州大学法学部卒
大阪大学大学院高等司法研究科修了