退職勧奨を受けたら?
こんにちは、弁護士の尾形です。
本日は、退職勧奨とは何か、もし、会社から退職勧奨を受けてしまった場合にはどうすれば良いのか、解説していこうと思います。
まず、退職勧奨とは何か、ですが、退職勧奨とは、会社が従業員に退職を促すものです。会社が一方的に行う「解雇」とは異なり、従業員が退職に同意しない限りは、退職とはなりません。
次になぜ退職勧奨が行わるのか説明します。日本においては、会社による従業員の解雇には、解雇事由というものが必要とされ、解雇を行うことが厳しく制限されています。これにより、従業員としての地位、特に正社員としての地位が厚く保護されてきました。対して、退職勧奨であれば、従業員が退職に同意する限り、解雇事由は不要となります。そのため、会社は、従業員を辞めさせる場合、解雇ではなく、まずは退職勧奨を行うことが多いのです。
あなたが退職勧奨を受けた際に一番重要な心構え、それは、退職勧奨を受けたからといって、辞職届や退職願にすぐにはサインをしないことです。
会社は、様々な理由をつけて退職勧奨を行います。たとえば、会社の業績悪化、事業の整理、他の従業員とうまくいっていない、あなたの能力不足などです。この中でも、能力不足、といわれた場合には、退職勧奨を受けた方にとっては、大変ショックだと思います。ショックを受けたあまり、その場で退職を受け入れてしまおうかという気持ちになるかもしれません。
しかし、そのような場合でも、グッとこらえて、その場で辞職届や退職願にサインをしないようにしてください。辞職届や退職願にサインをしたという事情は、裁判上でも、自らの意思で退職したということにつき、非常に重要な証拠となってしまいます。
会社が退職勧奨をしてきた場合、従業員からすぐには退職が受け入れられなかったときであっても、その後のプランを考えていることが多いと思います。基本的には、お金を積んで退職をお願いしてくるか、時間をかけて退職勧奨を継続してくるかのいずれかだと思います。能力不足が理由の場合には、定期的に課題を課して、その課題の達成具合をみるということもあります。
会社がお金を積んできた場合には、どの程度の金額であれば、退職を許容するか考えることになります。決まった相場があるわけではありませんが、退職の条件となる金額としては、給与の3か月分から6か月分とされることが多いようです。解雇の場合でも、1か月の解雇予告手当が会社から支払われますので、退職勧奨を受けた場合には、どんなに少なくとも、給与の1か月分は受け取るべきだと思います。
能力不足を理由に、課題を課された場合で、退職をするつもりがない場合には、基本的にはその課題をクリアするように、努力しましょう。ただし、その課題が明らかにクリアできないものである場合には、課題を課された時点で抗議するようにしましょう。
時には、退職勧奨を拒否した場合、会社が、配転・出向・降格などの不利益な人事上の措置を課してくることもあります。しかし、このような行為は、退職を誘導するものや報復として違法・無効とされる場合があります。
最後に、本日のまとめとなります。これまでお話してきたとおり、退職勧奨を受けた場合には、まずは、グッと堪えて、その場で辞職届や退職願にサインをしないようにしましょう。その後の会社との話し合いにより、会社からお金をもらって辞めるのか、その会社で引き続き働いていくのか、よく考えるようにしてください。退職勧奨を受けることは、どのような理由であればショックです。そのような場合には、おひとりで抱え込まずに、是非、我々弁護士にご相談ください。どうすればよいか、何が最善なのか、一緒に考えます。
本日のお話はここまでとなります。最後までご覧いただき、ありがとうございました。
著者プロフィール
尾形達彦 弁護士
おくだ総合法律事務所
埼玉県私立西武学園文理高等学校卒
早稲田大学法学部卒
早稲田大学法科大学院修了
福岡県弁護士会所属