株主総会の準備(2)株主総会当日の対応
こんにちは弁護士の奥田です。
今日は「株主総会の準備(2)」と題して、株主総会当日の対応についてお話をしたいと思います。
「株主総会の準備(1)」のときもお話ししましたけれども、上場企業だとか、あるいは特に何も揉めないような場合にはこういった準備は必要はない。上場企業の場合には信託銀行なんかがばっちり準備してくださいますので、こういったことを会社側で詳細に考える必要がなかったりしますけれども、中小企業で、なおかつ株主総会当日にちょっと紛糾・揉めることが予想されるといったような場合を念頭に、当日の対応について少しお話をしたいと思います。
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株主総会当日の目標
まず株主総会当日の目標というのは何なのかというと、まずは決議を得るということが必要です。
具体的にどういうことかというと、議長が「第●号議案について賛成の方、挙手をお願いいたします。…賛成多数と認めますので、本議案は可決されました。」という決議を得る、ということですので、これがまず必要ということになります。
それからもう一つは、議事録を作成する。こういう「第●号議案について可決、承認された」とかいうことが書いてある議事録を作成する。
それから、法務局で登記をする。これは例えば取締役の解任だとか、取締役の選任、これらは登記事項ということになってますので、この議事録を添付して法務局に登記申請をして、法務局が登記してくれる。そこまでが当日の目標ということになります。
受付の準備
それで、当日ですけれども、招集通知は前回お話したような形で通知は出した上で、まず受付のときからどういうふうにするのか。受付といえば、来た人に名前だけ確認して入ってもらえばいいじゃないの、と思うかもしれませんけれども、意外といろいろ対応を考えないといけない場面があって、例えば、まず誰の出席を認めるか。委任状というもので「株主からの委任状を俺はもらってきたんだ」という知人とおっしゃる方。この人に出席してもらっていいのかどうかですね。あるいは断っていいのかどうかということがまず一つあります。
それから、複数の代理人を認めるのか。例えば50株持っている人が、10株ずつ5人代理人だということで、5人寄こしてきたときにどうするのか、とかですね。そういったことが問題になり得ます。
そういうことは当日になるまでわかりませんので、いろんなケースを想定して、こういうときはどうする、こういうときはどうするということを考えておく必要があります。
それから、録音・録画、こういうものを認めるのか。株主の方が録音させてくれだとか、スマホで動画を撮らせてくれ、といったときにこれを認めるのかどうか、これも対応を考えておく必要がある。
誰の出席を認めるかとか、こういったことは認めなかった場合に決議取消訴訟だとか、裁判になったときに対応できるのかどうか、こういうことも視野に入れながら考えておくということが大切なことになると思います。
議事進行シナリオの準備
それから、議事進行シナリオの準備ということで、これは前回もちょっとお話しましたけれども、一つは想定問答の準備ですね。こういったことについて質問が予想されるから、こう聞かれたときにはこういうふうに答える。
もう一つ準備として必要なのは、質問の打ち切りのタイミングをどうするのかということですね。そこも考えておく必要があるということになります。それはもちろん今回は紛糾が予想される株主総会ですから、何でも馬鹿丁寧にずっと答えていると、もう時間が足りなくなって決議が得られない、とかいうことだって最悪想定しないといけないわけですから、どの程度まで応えて、これ以上はもう十分審議されましたから、ということで打ち切るのかということも考えておく必要があります。
それから質問・動議への対応の準備ですね。特にこの動議ということで、議長解任の動議だとか、あるいは総会の打ち切りの動議だとか、そういった動議というものを出されたときに、どういうふうに対応するのかということも準備しておく必要があると思います。
証拠の保全
それから最後ですけれども、最後に証拠の保全ということで、決議をしてきちんと登記ができたとしても、後日、株主総会決議取消の訴えだとかですね、そういう訴訟・裁判沙汰になることも念頭に置いておく必要があるかもしれません。
そのときにはまずは、その決議の証拠というのは、議事録が第一義的に証拠になるわけですので、きちんと議事録を作成して会社に備え置くということが必要ですし、それから、録音・録画を会社側として準備しておくというか、取っておくということも検討する必要があると思います。
ですのでこういったことを想定、きちんと準備をして、後日の株主総会決議取消の訴えだとか、こういったことに対応できるように準備をしておくということが必要になるかと思います。
今日のお話は以上です。
著者プロフィール
奥田貫介 弁護士
おくだ総合法律事務所 所長
司法修習50期 福岡県弁護士会所属
福岡県立修猷館高校卒
京都大学法学部卒