『裁判員候補者』に選ばれたら

こんにちは弁護士の田代です。
今回は『裁判員候補者』に選任されたらどうするのか、というテーマについてご説明致します。

裁判員制度、これは平成21年に始まり、ちょうど今年で10年になります。そして裁判所も、この10年という節目の中で、裁判員制度の運用について様々なデータを公表しました。

そこで今回はそういったデータを元に、裁判員候補者に選任された場合の裁判員になる確率や、審理期間での手続き・注意点などについてご説明できればと思っております。

まず、「裁判員候補者に選ばれた」という相談ですが、たまにですがございます。正式な法律相談というよりも、友達の家族とか身内からのざっくばらんな相談というケースの方が多いかなというのが個人的な印象です。

そして裁判員候補者に選ばれたという話、これはどのタイミングで来るのかと言いますと、まず裁判員の『候補者名簿』に登録されたという通知が、ある日突然裁判所から送られてきて、この段階でびっくりして相談に来られるのです。

この『裁判員候補者名簿』ですが、これは実は有権者の名簿、つまり選挙の管理に使われる名簿の中から抽選で選ばれており、その選ばれた中で裁判員候補者名簿というものが毎年作られております。

その名簿に登録される人数ですが、例えば昨年の平成30年では、約23万人がこの裁判員候補者名簿に登録されました。
この23万人という人数をどのように考えるか、多いのか少ないのかはちょっと分かりませんが、有権者が約1億人とざっくり考えると、0.2%です。
有権者の中の約0.2%強。そのように考えると、割合としては少ない。びっくりされるのもよくわかります。

それで、この裁判員候補者名簿に登録されたので、裁判員としての準備をしないといけないのではないか、と、こういったご相談に来られるのですが、この裁判員候補者名簿に記載されたからといって直ちに裁判員になるということはございませんので、まずは落ち着いていただければと思います。

まず裁判員候補者名簿に記載されている約23万人の中から、実際に裁判員の候補に挙がるのが、昨年でいうと約12万人と、おおむね半分です。半分強ぐらいの人数に絞られています。

そして、さらにこの裁判員候補者の中から、実際に『裁判員』あるいは『補充裁判員』といった、実際に裁判に参加するとなった人数は、裁判員が6000人、補充裁判員が2000人。合わせて8000人、これが昨年の日本全国の運用なんですね。

つまり、大雑把に言いますと、23万人が候補者名簿に登録され、この通知が来てびっくりされるんですけれども、この23万人のうち実際に『裁判員』としての活動をされる、あるいは『補充裁判員』(=補欠ですね。補欠でも実際裁判所に行って審理に立ち会うことにはなります。)ですけれども、その補充裁判員を合わせても8000人、この割合は3%強ぐらいの人数に絞られると、そういった確率ですので、まずそこまで慌てる必要はないかと思います。

注意点

①辞退の申出(理由・時期)

ただいくつか注意点はあります。
一つは辞退の申出です。
この点についてご説明しますと、まず裁判員の候補者名簿に登録され、その中から候補者が選ばれる。この中では特に辞退をするという必要はございません。

つまり、この中からまた抽選で人数が絞られるということになりますので、辞退しなくても裁判員にならないという可能性はございます。

ただし、この段階でも調査票が送られてきますので、もし、裁判員になりたくない、その理由というのが調査票に書かれている理由に当てはまる、という方は、それを送っていただければ間違いないと思います。(この”理由”については後でご説明します。)

次に候補者に選ばれましたと、この連絡を受けて、実際に裁判員なり補充裁判員になる間、この間には基本的には辞退、あるいは欠格(もともと裁判員になる資格がない)ということでなければ、きちんと辞退を申し出なければ、基本的にはもう裁判員になって、この選任の日に裁判所に来ていただく、ということになります。
この期間(候補者→裁判員)には、何度もそういった辞退の意思確認の機会がございますので、もし裁判員になりたくないと、そしてその理由がある方はについては、しっかりとご回答いただく必要がございます。

そして、今までちょっと出てきましたこの”辞退の理由”です。どんなものがあるかと言いますと、例えば高齢ですね。70歳以上の方については辞退ができると、逆に言うと高齢であっても自分は裁判員をやりたいという方については、もちろん裁判員となっていただくことは可能です。

あるいは、例えばご本人が病気やケガで大変な状況にある、あるいは家族がそういった状況にあって付き添う必要があるとか、そういったことも辞退の理由になります。

あとよく聞かれるのが、仕事の差し支えですよね。会社を休めない、これは直ちに辞退の理由にはなりませんが、業務上重要な局面にあって、裁判員となることで損害が出てしまう、そういった場合は辞退の理由とはなりますので、その辺りはしっかり検討いただければと思います。

この他、例えば学生さんなどについても、裁判員にはそもそもならないということになりますので、それらをご検討いただければと思います。

②審理期間

あとは、裁判員になるかならないか、辞退するか、を検討する時によく聞かれるのが、どれぐらいの負担があるのか。つまり、審理の期間、どれくらいの間裁判員として活動しないといけないんですかと、これもセットで聞かれますので今ご説明しておきますと、裁判所が裁判員制度が始まって10年という節目に公表したデータによりますと、平均した審理の期間としましては、概ね8日です。8日間というのが過去10年間の平均した裁判員の審理期間とされています。

ただこの8日間というのは土日なども含まれます。つまり実際審理がなかった日も含まれるということです。日数ではなくてあくまで”期間”ですので、実際に裁判員として活動しないといけないという日に限定すると、もうちょっと短くなるというのが私の印象です。

ちなみに最短で言うと、最短2日、と今までのデータでは言われているようです。
このような審理期間というところも考えてご検討いただければと思います。

③公表

最後にもう一つ注意点として補足しますと、「公表」 です。
裁判員として参加した裁判の内容については公にしてはいけません。これは広く知られていますが、裁判員の候補者になったという事も公にしてはいけない、という運用が取られております。

時々ですが、インターネットのブログなどにそういった記事が書かれていたりするのを見かけますけれども、こういうのはやってはいけないことなのでご注意ください。

ただ、公にしてはいけないということですが、例えば弁護士に法律相談に行かれるのはもちろん大丈夫ですし、あるいは友達に相談するというような、そういった付き合いのある範囲内ということでしたら、ルール上は許されておりますので、そこまで厳格になる必要はないかと思います。

以上、ざっくりとですが、裁判員裁判の裁判員の候補者に選ばれたときの注意点ということで情報提供をいたしました。

ご不明な点がございましたら弁護士にご相談いただいてもよろしいですし、当事務所にご相談にいらしていただければ補充でご説明したいと思います 。