契約書作成のすゝめ
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契約書の重要性
今回は、法的トラブルが生じた場合に発生することの多い、契約書がないという問題と、弁護士として作ることをおすすめする理由を解説いたします。
まず前提として、法律上の契約は、基本的には口頭でも書面でも成立することになります。少なくとも理屈の上では、契約書を作るかどうか、ということは契約の成立とは関係がありません。
では、理屈上必要でないなら、何故契約書が重要か、と言いますと、
①裁判官等の契約当事者以外の第三者に契約があったことを立証、つまり証明するため
②契約書という形に残すことで、長い時間が経過し、最早、最初の当事者間でどのような合意があったのか分からなくなることを防止するため
に必要となってくるからです。
具体例で考える不利益
契約書がない場合の不利益を具体例で考えてみましょう。
仮に、親族間で土地を貸した場合において、貸主Aさんが「親戚Bに土地を貸しているんだけど、とうに賃貸期間も終了しているから、土地を返してほしい!」と請求したとします。ところが、借主Bさんは「土地は借りているんじゃなくて、譲ってもらったのだ。代金も払ったから返す理由はない!」と主張して返してくれない場合、貸主Aさんとしては、最終的には訴訟を提起するほかありません。
訴訟になった場合、請求を認めてもらうためには、原告、つまり貸主Aさんがその前提となる契約が存在したことを裁判官に証明(立証)することになります。裏を返せば、Bさんが土地を「買ったものである」ことを証明する必要はないということです。
しかしながら、裁判官は契約を結んだ当事者ではないため、一方は貸した、もう一方は借りていない、という主張をされることになると、真偽は不明、つまり契約の存在は認定できない、という判断になり、Aさんの請求は認められないという結論にならざるを得ません。
そこで、契約書が当事者間において作成されていれば、裁判官としても「なるほど、契約書があるということは、実際に土地を貸し借りしましょう、という合意があったのだな。」という判断をし易いですし、契約の存否を判断するうえで重要な資料となります。
同じ事案でも、土地の貸し借りを行ったのが紛争当事者は孫であり、当初の合意は亡くなった祖父の代ということであれば、当の本人達に合意の内容を聞くこともできませんし、契約期間が何年間なのか、そもそも賃料がいくらになっていたのか、という基本的なことすら全く分からないということもあり得ます。
契約書作成のすゝめ
特に、
①代金額が大きいあるいは契約自体が複雑で、紛争になった際に揉めることが予想される契約
②土地の貸し借りや雇用契約等、長期的な継続することが想定される契約
③友人間のお金の貸し借り等、契約書以外の資料が残り難い契約
などの類型では、契約書を作成しておくことが大事になるかと思います。
ということで、今回は契約書のすゝめという題で、契約書作成の重要性を解説いたしました。もっとも、契約書を作成するというのは一般の方にとっては容易ではないかと思いますので、まずはお近くの弁護士に相談していただければと思います。
今回の動画はここまでとなります、ご視聴ありがとうございました。
著者プロフィール
田中大地 弁護士
おくだ総合法律事務所
司法修習74期
福岡県弁護士会所属
福岡県立修猷館高等学校卒
九州大学法学部卒
九州大学法科大学院修了