解雇か退職勧奨か

こんにちは、弁護士の田代です。
今回の動画では、「解雇か退職勧奨か」といったテーマについて解説いたします。

 

皆様もお仕事をしている以上は、いつかはもう辞めるという話が出たり、あるいは経営者の皆様には従業員に辞めていただくほかはない、という悩みを持たれている方がいらっしゃると思います。
この時に考えられるものとしては、「解雇」とか「退職勧奨」といったものがございますが、この解雇と退職勧奨は似ているようでも全く違う制度です。法律家にとってはこの違いは当たり前のように理解していることですけれども、意外とここが 曖昧になってる方、例えば経営者のご相談とかあるいは辞めさせられたという従業員の方からのご相談、どちらの立場からも誤解されてる方がいらっしゃいます。
非常に大事なテーマですので自信がない方はこの動画をご覧になって理解してください。

解雇

「解雇」とは何かというと、経営者の方から一方的な通知によって雇用契約を終了させることです。
ポイントは”一方的な通知”ということで、従業員の方からの同意だとかそういったものは求めていない、それが特徴です。

具体的な場面としては、例えばこんな形で文書で解雇通知書というものを従業員に対して出す。渡したり、送ったりだとか、そういった場面もございますが、それよりもむしろ多いのは、例えば「クビだ!」という風に従業員に言って、明日から出てこなくなってしまったりとか、あるいは会社の方から「明日から来なくていいよ」という風な言葉を言われる。これは口頭で言うこともありますが、最近だとLINE のやり取りだとかメールのやり取り、こういったものもよく目にします。こういった形で従業員の方からの了解を得ずに、もう来なくていい・もうやめろと言うことを通知・告知する、これが「解雇」です。

これは制度上どうなのかというと、認められていない。基本的にはそう理解していただいた方がいいと思います。
よっぽどのことで従業員が会社のお金を横領しただとか、あるいはいろんな不手際があっていろいろなことで警告だとか色々言ってきたけれども、それでもまだ直らないだとかいう場合はありますが、基本的には解雇というのは認められません。

そのためどうなるのかというと、明日から来なくていいとなって、従業員の方は明日から出てきません、1年経って解雇が無効だというふうに言われてしまうと、1年分の給料を従業員は出てきてないのに払わないといけない。しかも解雇は無効ですので、その後も従業員の方は仕事に戻るというケースが実際にございますのでご注意ください。

退職勧奨

それと似ているようで全然違うのが「退職勧奨」です。
経営者が従業員に対して、従業員が自ら退職することを促すことを「退職勧奨」と言います。自らの退職というのは何かというと、従業員の方から使用者・経営者の方に「やめます」と言う。これを”促す”ということです。
具体的には、退職してくれないかという風に促すというのが最もわかりやすい例ですね。これは何も法律上問題はございません。

なので会社としてはとにかくどうしても何らかの経営上の判断だとか、あるいは従業員との相性だとか、そういったものがあると思いますが、辞めてもらいたいという時には素直に従業員に対して「退職してくれないか」とお願いをすることについては何も問題はございません。もちろん従業員の方が「嫌だ」と言った時には、促す話ですので強制的に辞めさせることはできませんが、例えば「退職金として1~2ヶ月分あるいは3ヶ月分の給料を払うから」だとか、あるいは「次の就職先を見つけるまではこのまま働きながら就職活動していいから」だとか、そういった形で歩み寄りを見せるということが大切かなと思います。

 

退職勧奨に応じない時に、時々あるのがこういった書類を持ってきて、「これにサインしろ」と言う。このあたりになるとちょっと難しいんですよね。
例えば、サインするまでは部屋から出にくいような環境だったりだとか、あるいは「退職か転勤かよく考えろ」と言って退職届を従業員に突きつける。あるいは退職をするという選択を突きつけるような時には、この退職勧奨自体が悪質だとされて違法とされることもございます。
その場合、この従業員がそれに応じて仕方なく出した退職届、つまりは「やめます」というのが後でやはり無効となったりだとか、あるいはこういった行動自体が従業員に苦痛を与えたということで慰謝料を払わないといけないだとか、そういったこともございます。

あと、従業員のほうが退職勧奨にはもう応じない、つまりもう「やめません」という風に明確に言った後は、何回も「やめてくれないか やめてくれないか」としつこく言い続けると、これも違法とされるケースもございますのでご注意ください。

今回の動画では「解雇か退職勧奨か」というテーマについて解説いたしました。要するに、経営者の方は解雇という選択は基本避けてください。退職勧奨については基本的にはどんどんされてください。ただ先ほどのような退職の判断を突きつけるようなやり方はご注意ください。
また、従業員の方も、意に反して本当に自分から辞めたいというわけじゃないのに辞めることになってしまったという時には、こういった辞めさせられ方によって戦い方も変わってきますのでぜひご相談ください。