「契約書」と「確約書」。

同じように見えて、次のとおり違いがあります。

「契約書」は、当事者の双方が「合意」して、双方が署名捺印するものです。「合意書」ともいい、署名捺印した双方がこれに拘束されます。

「確約書」は、当事者の一方が「確約」するに過ぎず、一方のみが署名捺印するものです。「念書」ともいい、署名捺印した当事者のみがこれに拘束されます。

企業法務の実践では、この二つを的確に使い分けることが武器になります。
たとえば、会社で従業員の使い込みが発覚し、とりあえず500万円分については本人も認めているものの、今後の調査によっては額が増大する可能性があるというような場合。

このような場合は、まず、発覚した500万円について本人から「500万円の使い込みを認める。これについては責任をもって返済する。」という「確約書」(念書)を取っておき、その後、社内調査で全体像が明らかになり、返済方法について本人と話し合いがついた段階で「使い込み額は総額1000万円、返済方法は10回の分割払い、遅れずに返済されれば刑事告訴はしない」といった内容で、本人と会社とで「契約書」(合意書)を作成するのです。

本人が認めているうちに、早期に「確約書」をとっておくことで、その後、気が変わってしまって否認に転じたりすることを防ぎ、返還交渉をスムースに進めることができるというわけです。