“成年”になる皆さんへ(成年年齢引下げについて)【前編】
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1 はじめに
この動画では、前編・後編の2回に分けて、成年年齢引下げにまつわるお話をしたいと思います。
少しでも多くの方(特に、成年年齢引下げの影響を受ける皆さん)にこの動画で伝えたいことが届くよう、分かりやすい説明、伝わりやすい表現を、いつも以上に心がけたいと思っていますので、ぜひ最後までご覧いただけたら嬉しいです。
2 【盾】と【鎧】のおはなし
さて、成年年齢引下げの影響を受ける皆さんは、社会科の授業などで、この成年年齢引下げの内容や問題点について、既にたくさんのことを学び取られていることと思います。また、学校によっては、弁護士が出張授業・講義を行っているところもあると聞いています。
そんなこんなで耳にタコができる話題だと思いますが、ここで皆さんに質問です。大人、もとい、既に成年に達している私たちは、なぜここまで皆さんに口すっぱく成年年齢引下げのお話をしているのでしょうか?
この問いかけに答えられる方は、おそらくこの動画や記事を見なくても大丈夫でしょう。(いや、見ていただきたいですが!)
よく分からないという方は、ぜひ後編まで見ましょうね。
先に結論を述べます。それは、成年に達した皆さんを、たくさんのリスクが待ち構えているからです。
分かりやすく、ゲームのお話しに置き換えてみましょう。
法律の世界で、あなたが【未成年であること】は、あなたがとても強い【盾】や【鎧】を持っているのと同じことなんです。しかも、生まれた瞬間から持っている初期装備です。
ところが成年になると、このパワフルな【盾】や【鎧】がいきなりアイテム欄から消えてしまっているわけです。これまで立ち向かえていたはずの敵にも、全く太刀打ちできなくなります。めちゃくちゃ焦りますよね。
しかも、もともとLv20になれば発生していたこのイベントが、Lv18で発生するようになったわけです。難易度が上がったと思いませんか?
あなたは、新しい【盾】や【鎧】を装備しなければなりません。
この新しい【盾】や【鎧】というのが、成年として備えておくべき、法律的な【知識】です。この装備は、誰かが用意してくれるものではなく、自分で作り上げなければ手に入れられません。それも、最初はちょっと軟弱です。初期装備よりも軟弱だなんて、どういうこと?と思うかもしれません。
だけど、知識をつけるほど、磨くほど、強化されていき、前の装備よりも強くなる可能性だって秘めています。敵というリスクから、しっかりあなたを守る財産となるんです。
この動画は、あなたが自分で【盾】や【鎧】をしっかり作り上げられるよう、少しお手伝いをする鍛冶屋さんだと思ってください。
さあ、大事なことなのでもう1度言いますが、この動画や記事を最後までご覧いただけたら嬉しいです。
3 あなたが成年になるのは、いつ?
⑴ 前置きが長くなってしまいましたが、2022年(令和4年)4月1日から民法が改正され、成年年齢が20歳から18歳に引き下げられます。
ちなみに、ニュースなどでは成人年齢引下げ、という言葉をよく耳にしますが、下記のとおり、法律上正しくは成年であることを、法律家として謹んで補足いたします。
民法(~2022年3月31日)
第4条 年齢二十歳をもって、成年とする。民法(2022年4月1日~)
第4条 年齢十八歳をもって、成年とする。
⑵ 表をご覧ください。今回の民法改正の適用に影響を受けるのは、赤枠で囲った人たちです。
2002年度~2003年度生まれというのは、現時点の学年でいえば、高校3年生と、高校を卒業して1年目の方々です。
※ちなみに、投票権・選挙権については既に法改正が済んでいて、18歳に引き下げられています。
4 18歳になってできること、できない(20歳のままの)こと
⑴ 2022年1月現在、18歳になってできるようになること、できない(20歳のままの)ことについて、民法以外の法律も含めて簡単にまとめると、以下の表のとおりです。
できること(18歳に変わること)
◆親の同意なく契約ができる
・携帯電話 ・クレジットカード作成
・賃貸 ・ローン
・労働契約を結ぶ
◆結婚する
※男女ともに18歳から
(女性は16歳 → 18歳へ引き上げ)
◆資格・免許
・公認会計士資格
・医師免許 ・薬剤師免許
・司法書士資格 ・土地家屋調査士資格
◆家庭裁判所で自分の性別の取扱いを変更
する手続を行う
◆10年用一般旅券の取得
(5年用はもともと可能)
◆選挙権行使(既に施行)
◆裁判員に選ばれること※
※少年法改正(2022年4月1日~)
18・19歳は「特定少年」として、一応は少年法が適用。
できないこと(20歳のままなこと)
◆飲酒(未成年者飲酒禁止法で禁止)
◆喫煙(未成年者喫煙禁止法で禁止)
◆ギャンブル
・カジノ(特定複合観光施設区域整備法
で、施設への入場・滞在禁止)
・競馬・競輪・競艇
(競馬法、自転車競技法、小型自動車
競争法、モーターボート競争法など
で、投票券の購入・譲受 禁止)
※パチンコは、もともと18歳以上OK
◆国民年金の被保険者資格
◆大型・中型免許等
皆さんはひとまず、上の表をおさえておけばOKです。
なお、成人式については(18歳で実施するのか、20歳で実施するのか)、自治体の判断に任されています。ちなみに、福岡市では、大学受験や就職活動等の忙しさに配慮して、今後も20歳の方を対象に行うこととなっています。
⑵ さて、ここから先は、弁護士としてどうしても補足したいことがあるので、是非聞いてください。
※法改正により、18歳から様々な資格・免許取得が可能に…弁護士は?
実は、法律上、弁護士資格には年齢制限がありません。そもそも司法試験の受験資格に年齢制限がないのです。
※裁判員制度
ほとんど知られていないのですが、実は2021年5月、ひっそりと、裁判員制度に関する法改正が行われています。
※少年法改正
18・19歳は「特定少年」として、一応は少年法が適用されるものの、20歳以上と同様に取り扱われる可能性が拡大しました。
(実名報道が一部解禁されることも、ニュースなどでよく聞いていることと思います。)
5 まとめ
いったん、ここで区切りたいと思います。
今回の動画では、成年年齢引下げにまつわる事柄のうち、
■ 適用状況の整理(あなたが成年になるのは、いつ?)
■ 18歳になってできること、できないこと(20歳のままのこと)
について、お話をしました。
あなたの【盾】や【鎧】を作るために使えそうな素材・道具は見つかったでしょうか?
次回・後編の動画では、
■ 避けては通れない“契約”のお話
■ 【盾】【鎧】…初期装備の正体
■ 新しい【盾】【鎧】を作るために
■ さあ、あなただけの冒険を
という小見出しで、お話をする予定です。
これだけ見ると、もう法律のお話には見えませんが(笑)、ぜひご覧ください。
どうぞよろしくお願いいたします。
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著者プロフィール
井上瑛子 弁護士
おくだ総合法律事務所
兵庫県立神戸高等学校卒
九州大学法学部卒
九州大学法科大学院修了
福岡県弁護士会所属