時効の種類と区別
みなさん、「時効」という言葉を聞いた時に思い浮かべるのは、どのような制度でしょうか。普段、「時効」にはどんなものがあるのか、ということを意識することはあまりないかと思いますが、実は、「時効」には、民事法における時効と、刑事法における時効があります。これらについて今日は、ご説明したいと思います。
まず、民事法上の時効とは、ある事実状態が一定の期間継続した場合に、その事実状態に合致するように権利の取得を認めたり(取得時効)、あるいは権利を喪失させたりする(消滅時効)制度のことをいいます。
ある事実状態というのは、例えば、他人の土地建物だとは知らずにその場所に住み続けているとか、昔友人に借りてそのままになっていた本を持ちっぱなしである、飲食店でのツケを支払わないままでいる、借りたお金を返さないままでいる、といった事情のことです。これらの場合、もちろん、その事実状態が継続しているべき期間(1年、5年、10年、20年 等)や、その状態についての主観的な要素(本当は他人の所有物であることを知っていたか、知らなかったか)、相手の態度(お金を払ってくれ、本を返してくれ、と請求してきていたかどうか)といった点について、それぞれ所定の法律の要件を満たす必要はあります。
とはいえ、必要な要件をすべて満たした場合には、「時効制度を利用する」旨の意思を表示することにより、その土地建物や本の所有権を取得できたり(つまり、確定的に自分の所有物にすることができるということです)、お金を支払わなくてよくなったり(つまり、相手は一切そのお金を支払えと請求できなくなるということです)します。
これに対し、刑事法上の時効には、公訴時効と刑の時効があります。
公訴時効とは、事件の時から一定の期間が経過したことによって、公訴の提起ができなくなる、という制度のことです。公訴の提起がなされることによって、初めて犯罪についての訴訟手続が開始されるため、その公訴提起ができないということは、極端に言えば、犯人がわかっても事件についての刑事責任を追求することができないということを意味します。2010年までは、犯罪の種類によって期間の長さに違いはあったものの、すべての犯罪に、この公訴時効の制度が設けられていました。しかし、2010年の法改正により、人を死亡させた犯罪については時効期間が延長となり、なかでも特に重いもの(人を死亡させ、死刑にあたる犯罪の場合。殺人罪、強盗殺人罪等がこれにあたる。)については、公訴時効の制度が廃止となりました。
刑の時効とは、死刑以外の刑の言渡し(有罪判決、懲役○年 等)を受けた後、何らかの理由(逃亡等)で、刑の執行ができなくなり、そのまま一定の期間が経過した場合には、刑の執行が免除されるという制度です。実際には、あまり起こりうることではありません。
いかがでしたでしょうか。「時効」といってもいろいろな種類のものがあることを、ひとまずご理解いただけたのではないかと思います。時効の期間が経過するまでの間に、何らかの事情によって時効期間の進行がストップするような場合もありますので、これについても、いずれご説明したいと思います。
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