残業について(2)みなし労働時間制とは
いきなりですが、労働時間というのは、タイムカード等によってきちんと管理、把握されているのが通常ですよね?
ところが、特に正社員として働く労働者に関しては月給制がとられている場合がほとんどです。そうすると、時給計算をするわけではないから、働いた時間を厳密に記録しておく必要はないのでは? と、考えがちではないでしょうか。
しかし、1日ないし1週間ごとに、労働させてよい時間(法定労働時間)というのが法律で定められていることからもわかるように、時給制であれ月給制であれ、労働者がいったい何時間働いたのか、残業にあたる労働があるとすればそれは何時間なのかということをはっきりさせるために、労働時間の管理はとても重要となります。
これに対し、実際に何時間働いたのかということを、厳密に記録する必要がない場合というのが存在します。「みなし労働時間制」と呼ばれる制度が適用となる場合です。
みなし労働時間制とは、1日の実際の労働時間にかかわらず、あらかじめ定めておいた時間を労働したものとみなす制度です。例えば、あらかじめ1日9時間という労働時間が決められていた場合には、実際に6時間働いても、10時間働いても、その日の労働時間は9時間とみなされます。(このような場合、法定の8時間を1時間超えてしまっていますから、これに対しては残業代が支払われることになります。)
みなし労働時間制には、大きく分けて“事業場外労働のみなし制”と、“裁量労働のみなし制”の二つがあります。
事業場外労働のみなし労働時間制とは、「労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いとき」に適用されるものです。イメージとしては、外回りを行う営業マンなどがこれにあたりそうです。
しかし、労働中の労働者に対して、使用者の具体的な指揮管理が行き届くような場合には、“労働時間を算定し難い”とはいえず、みなし労働時間制が適用されないと考えられています。
たとえば、外回りというと、携帯電話で次の行動の指示が与えられたり、どこを訪問して何時に会社に戻るのかということがあらかじめある程度決まっていたりする場合が多いかと思うのですが、このような場合には、使用者の具体的な指揮管理が行き届いていることとなり、みなし労働時間制は適用されません。
次に、裁量労働のみなし労働時間制とは、「研究者、プログラマー、デザイナー、コピーライター、新聞・雑誌・テレビなどの記者、テレビ・映画のディレクターやプロデューサー、公認会計士、弁護士、建築士、不動産鑑定士等の19の職種」あるいは、「会社の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析等の業務」に適用されうるものです。
つまり、ここに挙げたような職業においては、仕事の進め方や時間の配分等を労働者本人に任せた方が効率がよかったり、合理的であったりする場合が多いため、実際の労働時間に関係なく、あらかじめ協定で決めた時間分を、働いたと“みなす”事ができるようにしよう、というわけです。
いずれの制度にせよ、上述の例のように、定められていた労働時間が法定労働時間(1日8時間、または、週40もしくは44時間)を超える場合には、残業を行った、ということになります。
しかし、みなし労働時間制がとられていることで、何時から何時まで労働したかということが厳密に記録されずに、法定労働時間を超えた労働も残業として扱われない場合がありえます。これでは残業代の未払いとして、問題になってしまいます。
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