民法改正案について(3)個人保証

 前回、前々回に引き続き今回も、民法改正案についてご説明したいと思います。今回は、「保証」についてのお話です。

 銀行が会社に対して融資をする際、銀行側は、会社が破産する等してお金を返せなくなった場合に備えて、連帯保証人をたてることを要求します。銀行としても、お金を回収できる可能性は高いほうが良いはずなので、これは当然のことでしょう。

 しかし、とくに中小企業などでは、会社の経営者個人である代表取締役や、その他の取締役や従業員、さらには経営者の家族、親族、親しい友人などを連帯保証人にすることが多く、会社が破産すると、それらの個々人が莫大な額の借金を背負うことになります。その結果、連帯保証人となってしまった個人が破産や自殺に追い込まれていく、というようなケースは、決して少なくありませんでした。

 そこで改正法案には、会社が融資を受ける際に、個人を連帯保証人とすることを、原則禁止とするルールが設けられています。

 原則禁止ということは、例外として個人が連帯保証人となりうる余地も残されているということになります。どのような場合かというと、まず、(1)経営者本人、(2)株主、(3)事業に従事する配偶者のいずれかの者が連帯保証人となる場合です。

 また、もう一つの例外として、「連帯保証人となろうとする個人が、公正役場において、公正証書を作成することによって、保証債務を履行する意思を表示した場合」があります。

 公正証書というのは、法律の専門家である公証人が作成する公文書のことをいい、確実な証拠として用いることができるものをいいます。ですから、上記の例外について簡単に言うと、経営者の友人等が安易にサインをして保証人となってしまったような場合ではなく、きちんと自らの意思で保証人となること決め、もしもの場合には借金を負担する覚悟ももっているような場合であって、そのことを公正証書によってきちんと証明できる場合であれば、これを連帯保証人として認める、ということになります。

 このようなルールが設けられると、中小企業等が金融機関からの融資を受けるハードルが高くなってしまうということが懸念されていますが、軽い気持ちで連帯保証人になったばかりに、気づいたら多額の借金を背負うことになっていたというような事態を防ぐためには、必要不可欠なルールと言えそうですね。

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