民法改正案について(2)約款

前回に引き続き今回も、民法改正案についてご説明していきたいと思います。今回も、注目される改正点のひとつである「約款」についてのお話です。

 「約款」は、主に企業が、多数の相手(消費者)と契約を締結するにあたって、すべての契約者との間で契約の内容を画一的なものとするために、あらかじめ契約条項を定型化したものとして利用しています。

 携帯電話会社や、クレジットカード会社、保険会社と契約を結ぶとき、あるいは、何らかの会員となるための契約の際などには、「約款」があることがほとんどではないでしょうか?

 最近では、インターネット上での取引が増えていますが、ネット上で契約が結ばれる場合は、相手方と契約内容について対話をしているわけではありませんよね。したがって、多くの場合は、「利用規約」や「約款」と呼ばれるものが提示され、その内容に拘束された状態で契約がなされます。

 そもそも、契約というのは、お互いの合意がなくては成立しません。そして、どのような契約内容にするのかは、本来、当事者の自由のはずです。

 しかし、「約款」が準備されていることによって、消費者にとっては、企業側が提示する「約款」の内容をすべてのんで契約をするか、契約できないか、という二択になってしまいますよね。

 とすると、消費者にとって不利な内容の「約款」が提示された場合はどうでしょうか?そのような「約款」でも有効とされると、消費者の契約の自由は奪われてしまいますよね。

 このように、「約款」を利用した取引というのは、便利さや消費者間の公平さという利点がある反面、少々危険な側面も持ち合わせているといえます。

 ところが、現行の民法に、この「約款」についての定めは一切ありません。つまり、法律上の根拠がないにもかかわらず「約款」を用いた取引というものが行われてきたということになるのですが、それでも一応、「約款」は有効であると考えられてきました。

 したがって、通常、私たちは、「約款」を利用した取引では、その内容に拘束されます。たとえ「約款」をよく読まずに契約を締結して、その内容があなたにとって不利であったとしても、です。

 このように、民法上とくにルールがないにもかかわらず使用されてきた「約款」ですが、今回の民法改正では、まずこの「約款」についての定義付けがなされたうえで(改正法では「定型約款」と呼ばれることになりそうです)、さらに以下のようなことが規定されることになりそうです。

 ある取引において「約款」が契約内容となることを消費者が把握しているか、把握していなくても、企業側がきちんと明示していたのであれば、その「約款」は有効となる。

 消費者の利益を一方的に害し、信義則に反するような「約款」の条項は、無効となる。

 契約締結後に企業側が「約款」の内容を変更することも可能であるが、消費者の利益になる場合などに限定される。

なお、改正法の「定型約款」の定義付けによると、これらのルールが適用されるのは「利用者が不特定多数で、契約内容を画一的にすることが合理的な取引」に限られるので、たとえば労働契約などは、適用対象とならないでしょう。

 改正に向けた審議はほぼ終了し、先日要綱案がとりまとめられたとのことなので、ここから大幅な変更が加えられる可能性は低いと思われますが、最終的にどのようなルールとなるのか、注目したいところです。

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