Q.家業の商店を会社にし、これまでどおり家族だけで経営したいと思います。祖父にも株主になってもらいたいのですが、近い将来、面倒な手続きをせずに父や私に株式を譲ってもらえるようにしたいのです。このような場合、どのような「株式」を発行すればよいのでしょうか?

A.会社は、発行する株式の全部又は一部に、株主の権利などについて「定款」で特別に定めた「株式」を発行することができます。会社が発行する株式の一部について、内容の異なる2以上の種類がある株式を「種類株式」といいます。

例えば、発行する株式の一部を、譲渡による取得について会社の承認を要する「譲渡制限株式」とそうでない株式にしておき、後者を譲渡の予定がある人に発行しておけば、譲渡が容易になります。

「種類株式」を発行する場合、異なる種類の株主の間で権利の調整をする必要があるため、「種類株式」の株主のみを構成員とする「種類株主総会」が必要となる場合があります。

「種類株式」は会社の資金調達だけでなく組織や経営に大きな影響を与えますから、「定款」に「種類株式」の定めを設ける場合には企業法務に専門知識のある弁護士にご相談ください。

1 「種類株式」とは

「株式」は、会社から配当を受ける権利などを表すものであり、自由に譲渡できるのが原則です。しかし、会社は、株主の権利などについて「定款」で特別に定めた「株式」を発行することもできます。

会社は、発行する株式の全部について特別の定めをすることも、発行する株式の一部についてのみ特別の定めをすることができます。

会社が発行する株式の一部について、内容の異なる2以上の種類がある株式を「種類株式」といいます。そして、他に種類のない同じ内容の株式を「普通株式」といいます。

なお、これとは異なる俗称として、「普通株式」を「定款」に特別の定めのない株式、「種類株式」を「定款」に特別の定めのある株式という意味でも用いられることがあるので注意が必要です。

2 「種類株式」の具体例

譲渡による取得について会社の承認を要する株式を「譲渡制限株式」といいます。「株式」は自由に譲渡できるのが原則ですが、家族や知人だけで経営を行いたい場合など、会社にとって好ましくない人が「株主」となることを防ぐため「譲渡制限株式」が用いられます。

会社は、発行する株式の全部を「譲渡制限株式」とすることも、発行する株式の一部を「譲渡制限株式」とすることもできます。

発行する株式の全部を「譲渡制限株式」とした場合、他に種類がないので、「譲渡制限株式」も「普通株式」です。

発行する株式の一部を、譲渡による取得について会社の承認を要する「譲渡制限株式」とそうでない株式にしておき、後者を譲渡の予定がある人に発行しておけば、譲渡が容易になります。

種類株式についての定款規定の具体例

(発行可能株式総数)
第○条 当会社の発行する株式の総数は1000株とし、このうち700株を普通株式、300株を次条に定める内容の株式(以下「A種種類株式」という。)とする。

(A種種類株式)
第○条 当会社のA種種類株式を譲渡により取得することについては、当会社の取締役会の決議による承認を要する。

3 「種類株式」を発行する場合の問題

「種類株式」を発行する場合、株主全体の「株主総会」では「種類株式」の株主に不利な決議がなされるおそれがあるため、異なる種類の株主の間で権利の調整をする必要があります。

そこで、ある「種類株式」の株主に損害を及ぼすおそれがあるときは、その「種類株式」の株主のみを構成員とする「種類株主総会」が原則として必要となります。しかし、「種類株主総会」の決議を要しない旨を「定款」で定めることができます。ただし、「定款」によっても「種類株主総会」の決議を不要とすることができない場合もあります。

「種類株式」は、優先的な配当をする定めを置くことにより出資を集めやすくできますが、「種類株主総会」の開催などの問題も生じてきます。
「種類株式」は会社の資金調達だけでなく組織や経営に大きな影響を与えますから、「定款」に「種類株式」の定めを設ける場合には企業法務に専門知識のある当事務所にご相談ください。