Q.わが社の「定時株主総会」が近づいてきました。新規店舗の建設を独断で進める取締役を、反対派の株主が解任しようとしています。「株主総会」の運営は、どのようにすればいいでしょうか?
A.「株式」を有する「株主」の意思を決定する「株主総会」のうち、毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならないものが「定時株主総会」です。
「株主総会」の開催前には、出席者が「株主」かその「代理人」かなどを受付で確認します。
議事進行にあたっては、反対派の「株主」からの質問や動議に対応できるよう、想定問答集を準備しておいたり、弁護士を同席させておいたりといったことが必要です。議事進行の混乱が予想される場合や、その後に決議の効力が裁判で争われることが予想される場合には、証拠の保全のため、録音や録画を行うことも検討すべきでしょう。
株主同士や株主と取締役が対立している場合、「株主総会」で取締役の解任などの目的を達成するためには、法令・「定款」に則り、入念な準備が必要となりますから、企業法務について専門知識のある弁護士にご相談ください。
1 「定時株主総会」とは
「株式」を有する「株主」の意思を決定する機関が「株主総会」です。「株主総会」のうち、毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならないものが「定時株主総会」です。
「取締役」3人以上で構成される「取締役会」が置かれている会社では、「株主総会」は、法律や「定款」で定められたことしか決定できません。
これに対して、「取締役会」が置かれていない会社では、原則として「株主総会」が一切の事項について決定できます。
2 「定時株主総会」の運営
(1)出席者の確認
「株主総会」の開催前には、出席者が「株主」かその「代理人」かなどを受付で確認します。
「代理人」は「株主総会」ごとに代理権を証明する「委任状」を提出する必要がありますし、会社が「代理人」の数を制限したり、「定款」で「代理人」の資格を「株主」に限定したりすることも一定の範囲で認められています。こうしたことから出席者の確認については、法令や「定款」を事前に確認した上で適切に対応しなければなりません。
(2)議事進行
「定時株主総会」では、取締役は、「計算書類」を提供してその承認を受け、「事業報告」を提供して内容を報告しなければなりません。
議事として多く取り上げられるものには、(ア)取締役・監査役の選任・解任、(イ)取締役・監査役の報酬等の改定、(ウ)剰余金の配当などがあります。
議事進行にあたっては、反対派の「株主」からの質問や動議に対応できるよう、想定問答集を準備しておいたり、弁護士を同席させておいたりといったことが必要です。議事進行の混乱が予想される場合や、その後に決議の効力が裁判で争われることが予想される場合には、証拠の保全のため、録音や録画を行うことも検討すべきでしょう。
(3)議事録の作成と登記
事前のシナリオどおりに議事を進行し、「株主総会」の議決を得ることが第1の目標となりますが、続いて、議事や議決について直ちに「議事録」を作成し、取締役の解任・選任など登記が必要なものについては登記手続を行うことが第2の目標となります。
取締役の変更の登記は2週間以内にすればよいのですが、できれば「株主総会」当日中に登記申請まで行えた方がよいでしょう。取締役の就任には「株主総会」で選任された人の承諾が必要となりますから、「就任承諾書」など必要なものを事前にきちんと準備しておく必要があります。
3 「株主総会」の運営のご相談
「定時株主総会」では、「計算書類」や「事業報告」を事前に準備する必要があります。それに加えて、株主同士や株主と取締役が対立している場合には議事進行が混乱することが予想されます。こうした中で所期の目的を達成するためには、法令・「定款」に則り入念な準備が必要となりますから、企業法務に専門知識のある当事務所にご相談ください。
【動画】株主総会当日運営での3つの必須項目+注意すべきこと
動画書き起こし文
こんにちは。弁護士の奥田貫介です。今日は取締役の解任など混乱が予想される、株主総会の当日の運営についてお話ししたいと思います。なお、事前の準備につきましては別のところでお話ししておりますので、そちらも合わせてご覧いただければと思います。
さて、こうした株主総会の当日は、次の3つのことを目標とします。
まず第1に予定の決議をやる。当然のことながら予定の決議をきちんとやるということが必要となっています。すなわち議長が事前のシナリオどおりに議事を進行し、事前の根回しどおりに予定の決議について多数決を得ていくということ。これがまず第1の目標となります。
それから2番目に議事録を作成するということになります。これは決議ができたらすぐにその場で議事録を作成するということになります。
それから3番目に、法務局で登記の申請をするということになります。これもできれば当日中に、法務局で登記申請までやるということが目標になります。そのため取締役の選任などについては、これは就任承諾書など事前に必要なものをきちんと準備しておいて、当日中に法務局に持ち込むということが必要となってきます。この3つを目標にすることになります。
さて当日はまず受付段階からいろんな問題が生じてきます。例えば委任状を持参した者について、その者の出席を認めるのか、あるいは委任意思をどうやって確認するのか。といったような問題があります。例えば委任状を持参した者の出席を認めるかについては、事前に法令あるいは定款を確認しておいて、どういうふうに対処するのかということをその場で適切に判断する必要が出てきます。
さらに議事進行にあたっては、反対派株主からの質問、あるいは動議にどのように対応するのかといったことを、想定問答集を事前に作成しておいてその準備をしておくということになります。場合によっては弁護士を同席させて、その場で弁護士からのアドバイスを得て対応していくということも有効だと思います。議長はシナリオどおりに議事を進めて、弁護士あるいは事務局が見極めたタイミングで質疑応答を打ち切り、議決に移って適切に多数決で議決を得ていくということになります。
なお、混乱が予想される場合には、その後に決議の効力を裁判で争われるということも考えられますので、こうした場合には議決の決議の議事の進行について、録音しておくとか、あるいは録画をしておくといった対応も有効な場合があります。