Q.わが社は、家族で経営していた商店を会社にして、親戚10人が「株主」となっています。ある株主と折合いが悪くなった「取締役」を解任すべきかどどうかについて、株主同士が対立しています。「株主総会」に向けてどのような準備をすればいいでしょうか?
A.「株式」を有する「株主」の意思を決定する機関が「株主総会」です。
「株主総会」での多数決は1株1議決権とされますから、株主の意見が分かれている場合には「株式」を多く持っている人の合意を取り付ける多数派工作が必要です。
「株主総会」の招集手続、議事進行は法律・「定款」に則って行う必要がありますし、議事進行を円滑に行うためには事前のシナリオづくりが重要です。招集手続や議事進行に重大な法令・「定款」の違反があれば、「株主総会」の決議が裁判で取り消されることがあります。
「株主総会」で取締役の解任などの目的を達成するためには、法令・「定款」に則り入念な準備が必要となりますから、企業法務に専門的知識のある弁護士にご相談ください。
1 「株主総会」とは
「株式」を有する「株主」の意思を決定する機関が「株主総会」です。
会社に関することは、原則として「株主総会」が一切の事項について決定できます。
ただし、「取締役」3人以上で構成される「取締役会」を設置した会社では、この「取締役会」が経営について決定します。このことから「株主総会」は、法律や「定款」で定められたことしか決定できません。(「株式」を譲渡するのに会社の承認が必要であること(譲渡制限)を「定款」に定めていない会社等では取締役会の設置が義務づけられています。)、
2 「株主総会」の準備
(1)多数派工作
「株主総会」での多数決は、1株1議決権とされますから、「株式」を多く持っている人の合意を取り付けることが必要です。このことから「株主名簿」で株主と議決権数を確認しておくとよいでしょう。
「株主総会」では、代理人による議決権の行使ができますから、出席が困難な「株主」からは事前に「委任状」を得ておくとよいでしょう。代理人が「株主」でなければならないと「定款」に定められている場合がありますので、「定款」を確認する必要があります。
(2)招集手続の確認
「株主総会」の招集権者は、原則として「取締役」です。
「株主総会」の招集通知は、「取締役会」がある会社では、2週間前までに日時・場所・目的事項を記載した書面などを発送しなければなりません。「取締役会」がない会社で、書面・電磁的方法によって議決権を行使できる場合は、原則として1週間前までに書面を発しなければなりません。
「株主総会」の招集手続は、すべての「株主」に開催と目的事項を知らせることによって出席・準備の機会を与えるものですから、法令や「定款」違反があれば、「株主総会」の決議が裁判で取り消されることがあります。
(3)議事進行の準備
「株主総会」の議事進行については、法律で特に定められていないので、「定款」や慣習によります。議長に誰がなるかについては、「定款」で定められていることが多いですが、「定款」に定めがなければ「株主総会」で選任します。
「株主」に意見の対立がある場合、円滑に議事進行をするため、事前にシナリオを準備しておくことが重要です。
「株主総会」の議長には議事進行について裁量が認められますが、決議の方法が著しく不合理な場合には、決議が裁判で取り消されることがあります。
(4)議事録の作成・登記の申請
「株主総会」の議事録は、10年間、本店に備え置き、原則として「株主」などからの閲覧の請求に応じる必要があります。
「株主総会」で決議した取締役の解任・選任などは、「法務局」という役所やインターネットで登記する必要があります。登記の申請には、「株主総会」の議事録など必要な書類を事前に確認しておく必要があります。
3 「株主総会」の準備のご相談
中小企業、とりわけ、株主のほとんどが同族で占められているような株式会社では、「株主総会」は、年に1度集まって形式的に行うだけであったり、議事録を作成するだけであったり、さらには、開催していない場合すらあります。
もちろん、株主間にもめ事がなく、将来的にもめ事の発生が考えられないような場合にはそれでも問題は生じない場合もありましょう。しかし、株主総会で取締役の解任を行いたい場合、単に「株主総会」に出席して取締役の解任を提案し、議決を得るという方針では不十分です。
「株主総会」で取締役の解任などの目的を達成するためには、法令・「定款」に則り入念な準備が必要となりますから、企業法務に専門知識のある当事務所にご相談ください。