Q.祖父が家族で経営してきた会社を引退したいというので、私が祖父の「株式」を譲り受けました。しかし、会社の「株主名簿」はまだ書き換えられていません。「株主総会」の招集通知は祖父に送付するのでしょうか。
A.「株主名簿」は、会社から「株主」に対する通知や「株主」から会社に対する権利の行使の際、「株主」は誰かを決める基準となるものです。
会社の株式が譲渡された場合でも、株主名簿の名義書換がなされないかぎり、会社は、原則的に名簿上の株主を株主として取り扱えばよいものとされています。そのため、ご質問のケースでは、会社は、株主総会の招集通知を株主名簿も名義人(祖父)に送付する取扱いが通常でしょう。
株式の譲渡がされた後に株主名簿の名義書換がなされるまでの間の権利関係は複雑な問題が生じやすいですから、企業法務について専門知識のある弁護士にご相談ください。
1 「株主名簿」とは
「株主名簿」とは、株主の氏名・住所等を記載・記録した帳簿をいいます。
「株主名簿」は、会社から「株主」に対する通知や「株主」から会社に対する権利の行使の際、「株主」は誰かを決める基準となるものです。
株式の譲渡があった場合、株式を取得した人の氏名・住所を「株主名簿」に記載しなければ、会社に対して株主であることを主張することができません。すなわち、会社の株式が譲渡された場合でも、株主名簿の名義書換がなされないかぎり、会社は、原則的に名簿上の株主を株主として取り扱えばよいものとされています。
2 「株主名簿」の名義書換え
株式取得者は、原則として、会社に対して「株主名簿」の名簿の書換えを請求することができます。
万が一、会社が「株主名簿」の名義書換を、不当に拒絶したり、過失により怠ったりすれば、「株式取得者」が会社に対して「株主」であることを主張できることもあります。
そして、「株主名簿」の名義書換がなされれば、「株式取得者」は会社に対して「株主」であることを主張でき、会社はその人を「株主」として取り扱う義務があります。
こうしたことから、株式の譲渡がなされたにもかかわらず、会社が、正当な理由なく「株主名簿」の名義書換をせず、名簿上の株主に「株主総会」の招集通知を送付した場合、「株主総会」の決議が裁判で取り消される可能性もあります。
3 「譲渡制限株式」の「株主名簿」の名義書換
中小企業では、譲渡による取得について会社の承認を要する「譲渡制限株式」が発行されていることも多いでしょう。
「譲渡制限株式」の場合、株主からの会社に対して承認するよう請求し、会社が承認しなければ譲渡できませんから、会社は譲渡を承認した後すみやかに「株主名簿」の名義書換を行うべきです。
「株主名簿」は、「株主総会」の招集通知だけでなく「株主総会」の出席確認・議決権の行使などについて重要な基準となるものですから、適切に管理する必要があります。株式の譲渡がされた後「株主名簿」の名義書換がなされるまでの間の権利関係は複雑な問題が生じやすいですから、企業法務について専門知識のある当事務所にご相談ください。