Q.これまで「就業規則」には、一定以上の役職にある従業員には定年が定められていませんでした。一定以上の役職にある従業員にも定年を定めるよう「就業規則」が変更されると、要件をみたす従業員は退職することになるのでしょうか?
A.「就業規則」とは、労働条件や職場規律などについて使用者が定める規則をいいます。
「就業規則」の変更後の内容を労働者に周知させ、かつ、「就業規則」の変更が、合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の「就業規則」に定めるところによるものとされます。
例えば、従来定年制のなかった一定以上の職にある被用者に対して、使用者会社が「就業規則」で新たに定年制を定めた場合、「就業規則」の変更によって解雇されることになる被用者に対しても、その同意の有無にかかわらず、効力が認められる場合があります。
「就業規則」は、使用者が変更できますが、作成・変更する「就業規則」の内容について、記載事項に漏れはないか、法律等に反しないか等を検討する必要はあります。こうした判断には企業法務についての専門知識が必要となりますので、弁護士にご相談ください。
1 就業規則と法令・労働協約との関係
「就業規則」とは、労働条件や職場規律などについて使用者が定める規則をいいます。
「就業規則」は、法律に違反する定めはできません。
例えば、労働者が業務上負傷した場合、治療のために休業する期間とその後30日間は解雇することが「労働基準法」で禁じられていますから、これに反する「就業規則」は無効であり、解雇することはできません。そして、一定の労働時間毎に休憩時間が必要となりますし、懲戒権の行使方法は段階的に定める必要があります。
また「就業規則」は、労働組合と使用者の間で結ばれた労働条件に関する合意である「労働協約」に反するものも無効となります。
2 就業規則と労働契約との関係
「労働契約」とは、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うという契約をいいます。
「就業規則」は、「労働契約」のうち「就業規則」の基準に達しない部分を無効とし、その無効になった部分を補う効力があります(最低基準効)が、「就業規則」の変更後の内容を労働者に周知させ、かつ、「就業規則」の変更が、「就業規則」の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の「就業規則」に定めるところによるものとされます。
例えば、質問のように、従来定年制のなかった一定以上の職にある被用者に対して、使用者である会社が「就業規則」で新たに55歳の定年制を定めた場合、その他の事情として、同社の一般職種の被用者の定年が50歳と定められており、また、変更された「就業規則」の条項で、被解雇者に対する再雇用の特則が設けられ、同条項を一律に適用することによって生ずる苛酷な結果を緩和する途が講ぜられている等の事情があるときは、変更された条項は、改正後ただちにその適用によって解雇されることになる被用者に対しても、その同意の有無にかかわらず、効力があるとする判例があります。
3 「就業規則」のご相談
「就業規則」は、変更後の内容が一部の被用者に対し、不利益なものであっても、その他の事情と相まって合理的なものであれば、効力が認められることになります。変更後の内容が合理的なものか否かについては、作成・変更する「就業規則」の内容について、記載事項に漏れはないか、法律等に反しないか等を検討する必要はあります。
そして、「就業規則」の作成にあたっては、労働組合等の意見を聴かなければならないなど、法律で定められた手続が必要となります。
こうした検討や作成には企業法務についての専門知識が必要となりますので、お気軽に当事務所にご相談ください。