まず、会社と退職従業員との間で、競業を行わない旨の契約(競業避止契約)がなされることが必要です。これがない場合、退職した従業員がどのような職業につくかは全く自由であり(職業選択の自由。憲法24条)、これを阻止する方法は原則としてありません。
次に、会社と従業員との間で競業避止契約がなされる場合でも、その内容が上記「職業選択の自由」を不当に制約するようなものであれば、法律上無効となることがあります。
競業避止契約が有効かどうかは、
①その従業員の会社での地位や職種、
②従業員にとってのメリット(競業避止契約をすることと引き替えに退職金の上乗せがされる等)、
③競業が禁止される地域が合理的範囲に限定されているか、
④競業が禁止される期間が合理的範囲に限定されているか、などの点から判断されます。
このように、「競業の禁止」は、退職従業員の「職業選択の自由」という「憲法上の人権」とぶつかるものであるため、簡単には認められないと心得るべきです。
ちなみに、退職従業員による他の従業員の「引き抜き」についても、元同僚に転職を提案することは原則として何ら違法ではないことになります。
なお、従業員の競業が会社の顧客情報などを不正に持ち出してなされた場合には、会社として差し止め等の手段がとれる場合もあります。