Q.いつも夜遅くまで働いている従業員に残業代を支払ったことがありません。残業代を支払わない契約にしておけば、残業代を支払う必要はないのでしょうか?

A.法律では、原則として、休憩時間を除いて、1週間に40時間、かつ、1日に8時間を超えて労働させてはならないとされています。この法定労働時間を超えて労働させた場合、使用者は、その対価として、「割増賃金」を支払わなければなりません。

労働時間の制限や「割増賃金」は、法律で強制されており、これに反する合意は無効ですから、残業代を支払わない契約は無効です。したがって、使用者は労働者に対して残業代を支払わなければなりません。

残業代の請求は、数か月あるいは1年以上の期間の分がまとめて請求されるケースがよくあります。このような請求の場合、「本当に残業していたのか」「残業していたとしてもどれだけ働いていたのか」など、使用者・労働者とも納得できないまま、対応を余儀なくされます。

そのような事態にならないように、また万一、未払いの残業代の請求がなされた後でも証拠を精査して適切な対応ができるように、日頃から弁護士に相談しておくと安心です。

1 残業代を支払わなければならない場合

残業代は、どのような場合に支払わなければならないのでしょうか。

残業代・残業手当は、法律上、時間外労働の「割増賃金」といいます。

「労働基準法」では、原則として、休憩時間を除いて、1週間に40時間、かつ、1日に8時間を超えて労働させてはならないとされています。

そして、この法定労働時間を超えて労働させた場合には、使用者は、その対価として、「割増賃金」を支払わなければなりません。

2 残業代を支払わない合意は有効か

原則として無効です。

最近、残業代の請求事件が多くみられます。その一方で、「うちは残業代を払う制度になっていない」と誤解している事業者や労働者もみられます。

しかし、労働時間の制限や「割増賃金」は、法律で強制されており、これに反する合意は無効です。
そのため、原則として、労働者に残業代を支払わなければならないのです。

3 残業代請求の予防と対応

もし、企業が時間外労働の制度を正確に把握していなければ、労働者から数年分の割増賃金をまとめて請求されることがあります(ただし、2年間を経過した分については、時効による消滅を主張できる場合があります。)。

残業代の請求は、数か月あるいは1年以上の期間の分がまとめて請求されるケースがよくあります。
「残業していたとしてもどれだけ働いていたのか」など、使用者・労働者ともに納得できないまま、対応を余儀なくされます。

そのような事態にならないように、また、万一、未払いの残業代の請求がなされた後でも証拠を精査して適切な対応ができるように、弁護士にご相談ください。

 

【動画】残業代とは何か? ~労働時間と残業代~

労働時間と残業代の考え方についてご説明します。
最近、残業代の請求事件に接することがよくあります。その一方で、経営者や労働者の中に、「うちの会社は残業代は出ないから」と誤解している人もよく目にします。本当に、残業代を払わなくてよいのでしょうか。

そもそも、残業代とは何なのか、そこからご説明します。法律上の残業代とは、「時間外労働の割増賃金」のことをいいます。これは、決まった退社時刻のあとに支払われるというものではありません。

法律上、企業は、労働者を、1日に8時間、あるいは、1週間に40時間を超えて、働かせてはいけません。そして、労働時間がこれを超えた場合には、企業は、その対価として、割増賃金を払わなければなりません。これが、残業代なのです。
例えば、ある労働者が、朝の8時から夜の7時まで勤務して、昼休みを1時間とった場合、その日の労働時間は10時間となります。そのため、そのうち、8時間を超える2時間分は時間外労働となって、残業代が発生するのです

【動画】残業代はいくらか?

前回は、残業代の考え方についてご説明しました。
前回の冒頭に触れたように、「うちの会社は残業代は出ないから」と誤解している人が、経営者にも労働者にもいます。
しかし、このような残業代の制度は、法律で強制されており、これに反する労働契約は無効です。そのため、基本的には、どの企業でも、労働者に残業代を支払わなければなりません。

では、企業は、いくらの残業代を支払わなければならないのでしょうか。
残業代、つまり、時間外労働に対する割増賃金は、通常の賃金の25%以上となります。例えば、通常1時間当たり1000円で働く労働者に対しては、時間外労働では1時間当たり1250円以上支払う必要があります。
また、このほか、割増賃金には、深夜労働に対するものや、休日労働に対するものもあります。その金額は、深夜労働については通常の賃金の25%、休日労働については通常の賃金の35%となります。そして、例えば、深夜に時間外労働をした場合には、深夜労働と時間外労働の両方の割増賃金が加算されます。
このように、割増賃金の金額は、各ケースによって異なるので、まずはお気軽にご相談ください