Q.アルバイトを含めて10人ほど働く飲食店を経営していますが、従業員が調理作業中、手に大やけどを負いました。その従業員は治療のため長く休むそうなので、すぐに辞めてもらってもいいでしょうか?

A.すぐに辞めてもらうことはできません。
常時10人以上の労働者(アルバイト・パートタイム労働者なども含む。)を使用している使用者は「就業規則」を作成しなければなりません。そして、就業規則には、必ず退職に関する事項を定めなければなりません。

また、労働基準法で、労働者が業務上負傷した場合、治療のために休業する期間とその後30日間は解雇することが禁じられています。
ですから、上記のような場合に、働いてもらうことができないからといって、解雇することは許されません。

なお、使用者(事業者)は、労働者の業務に起因する労働者の負傷など「労働災害」の防止のため、「労働安全衛生法」で定められた最低基準を守らなければなりません。そして、使用者は、労働者の生命・身体等の安全を確保しつつ労働ができるよう配慮する義務(安全配慮義務)に違反することによって労働者に損害が生じた場合には損害賠償をしなければならない場合があります。

人の身体に対する損害賠償は非常に高額となりますし、事例によっては、マスコミ報道等による企業イメージへのダメージも無視できませんから、企業にとって「コンプライアンス(法令遵守)」は欠かせません。さまざまな場面で日常的に法令は関わってきますので、いつでも相談でき、かつ企業の立場に立って物事を判断できる顧問弁護士についてご検討されてはいかがでしょうか。

1 人事労務管理

「事業は人なり」とよく言われます。
企業を円滑に運営するため、また、労働力を効率的に活用する(従業員の能力を最大限引出し、就労意欲を向上させる)ために、適切な人事労務管理は非常に重要なものです。

労務についてのトラブルが多い企業は、その体制が整っていなかったり曖昧であったりするケースがほとんどです。相手(従業員)は感情と意思をもった「人」であるため、いったんトラブルに発展すると一筋縄では解決できないことが多いのです。

人事労務管理について法的に整えておくことは、会社の発展や信用の向上に繋がるといえます。

2 「就業規則」の作成

「就業規則」とは、労働条件や職場規律などについて使用者が定める規則をいいます。

「労働基準法」では、常時10人以上の労働者(アルバイト・パートタイム労働者なども含まれます。)を使用している事業場は「就業規則」を作成しなければならないと定められています。

「就業規則」には、退職に関することなど必ず記載しなければならない事項(絶対的必要記載事項)などがありますので、作成する際には「労働基準法」をしっかり理解しておかなければなりませんが、法令は改正が繰り返されていることが多いため、それに応じて適宜これまでの規則を見直したり、改正したりといった作業が必要になってきます。

モデル就業規則などをそのまま使用している会社もありますが、法改正もふまえながら、各事業場の実情に応じた「就業規則」の作成が重要です。

3 解雇における判断

従業員を解雇する・退職させることは、大変デリケートな問題です。辞める側としては、生活がかかっているのですから、納得できなければ当然トラブルに発展します。経営者側の安易な判断で解雇を行うと、労働審判や労働訴訟を起こされる可能性があります。

解雇にはさまざまな法律(民法、労働法、労働基準法、育児介護休業法など)によって、制限が設けられています。

(1)差別的な理由に基づく解雇の制限

国籍を理由とした解雇、女性の婚姻や妊娠などを理由とした解雇など

(2)時期的な制限

負傷・疾病療養中、療養による休業後一定期間内の解雇、女性の産前・産後休暇中の解雇など

(3)労働組合員に対する解雇の制限

組合員であることを理由とした解雇、組合活動をしたことを理由にした解雇など

また、ケースによっては「解雇予告手当」を支払わなければならない場合がありますので、この点の十分な知識も必要となってきます。

解雇の理由は何であるのかを法的に正しく判断しなければ、トラブルに発展することは必須です。理不尽な理由で解雇を行ってしまうと、会社として他の従業員からも信用を失い、会社の運営に支障をきたすことも念頭に置いておかなければなりません。

4 「労働災害」の防止

「労働災害」とは、業務に起因する労働者の負傷・疾病・死亡をいいます。

使用者(事業者)は、「労働安全衛生法」で定められた「労働災害」の防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければなりません。

そして使用者は、労働契約に伴い労働者の生命・身体等の安全を確保しつつ労働ができるよう配慮する義務(安全配慮義務)を負い、この義務に違反することによって労働者に損害が生じた場合には損害賠償をしなければなりません。

重篤な「労働災害」は、製造業や建設業だけでなくサービス業などの第三次産業でも転倒などにより発生し、人の身体に対する損害賠償の額は非常に高額となるケースが多く見られます。

また、近年は、うつ病などメンタル・ヘルスの不調と労働災害の関係が大きな問題となっています。事例によっては、マスコミ報道等による企業イメージへのダメージも無視できません。

こうしたことから、「労働災害」の防止はすべての使用者にとって大きな課題となり、この面の管理体制を整えておく必要があります。

企業存続と発展のためにも、今や企業にとって「コンプライアンス(法令遵守)」は欠かせません。さまざまな場面で日常的に法令は関わってきますので、いつでも相談でき、かつ企業の立場に立って物事を判断できる顧問弁護士についてご検討されてはいかがでしょうか。

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