定期建物賃貸借契約

たとえば、転勤にともなってしばらく自宅を賃貸に出したいが、2年後からはまた自分たちが居住することになるので、2年間の期間限定での賃貸借契約を結びたい、ということがあります。

この場合、賃貸借契約書において、単に「期間2年」とか「賃貸期間 平成29年6月1日~平成31年5月31日(2年間)」と定めているだけでは、期間満了の一定期間前に更新しない旨を告げたとしても、「正当事由」がないとして、更新拒絶が認められない=出て行ってもらえない、ということになってしまいます。

そのため、このような場合には、最初に賃貸するときに、借地借家法38条所定の「定期建物賃貸借」という賃貸形式にしておく必要があります。

この「定期建物賃貸借」は、更新のない賃貸借ですが、そのためには、「書面」によって契約することと、あらかじめ、賃貸人から賃借人に対し、契約の更新がなく期間満了によって終了することを、その旨を記載した「書面を交付して説明」しなければならない、ことになっています(借地借家法38条)。

ここで、「書面を交付して説明」というのは、「契約書」や「契約書案」に更新がない旨書いてあるだけでは駄目なことに注意が必要です。
すなわち、この点に関して、最高裁は、契約書とは「別個独立の書面」の交付が必要であり、そのことは、賃借人が契約更新がないことを知っていたかどうかは関係ない、と言っているのです。

建物を期限を定めて賃貸したい時は、この「定期建物賃貸借」という形式をとることが必要であり、それには上記のような手順を踏むことが必要となるのです。

【ご参考までに】

借地借家法

第三十八条 期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、第三十条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。この場合には、第二十九条第一項の規定を適用しない。

2 前項の規定による建物の賃貸借をしようとするときは、建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、同項の規定による建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。

3 建物の賃貸人が前項の規定による説明をしなかったときは、契約の更新がないこととする旨の定めは、無効とする。

4 第一項の規定による建物の賃貸借において、期間が一年以上である場合には、建物の賃貸人は、期間の満了の一年前から六月前までの間(以下この項において「通知期間」という。)に建物の賃借人に対し期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知をしなければ、その終了を建物の賃借人に対抗することができない。ただし、建物の賃貸人が通知期間の経過後建物の賃借人に対しその旨の通知をした場合においては、その通知の日から六月を経過した後は、この限りでない。

5 第一項の規定による居住の用に供する建物の賃貸借(床面積(建物の一部分を賃貸借の目的とする場合にあっては、当該一部分の床面積)が二百平方メートル未満の建物に係るものに限る。)において、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情により、建物の賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、建物の賃借人は、建物の賃貸借の解約の申入れをすることができる。この場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から一月を経過することによって終了する。

6 前二項の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。

7 第三十二条の規定は、第一項の規定による建物の賃貸借において、借賃の改定に係る特約がある場合には、適用しない。

全文はこちら(電子政府の総合窓口 e-Gov)

著者プロフィール


奥田貫介 弁護士

おくだ総合法律事務所 所長
司法修習50期 福岡県弁護士会所属
福岡県立修猷館高校卒
京都大学法学部卒

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